とにかく好きを語りたい

好きなものをとにかく語ります。今は『ミュージカル刀剣乱舞』の感想がメインです。

読書メモ:遠藤周作、笙野頼子

 先月から、読書の秋というし本を読みたいなあと思い、いろいろ読んでおりました。きちんとした紹介や感想を書くのは大変なので、「読書メモ」ということで少し感想を書きたいと思います。
 今回は遠藤周作笙野頼子の本です。

遠藤周作

『深い河』

タイトル:深い河
ジャンル:小説

 昔「遠藤周作の『沈黙』と『深い河』は絶対読んだ方がいい」と強くおすすめされたのですが、『沈黙』を先に読みあまりにしんどい内容だったので、その後遠藤周作の作品は避けていました。
 ですが、先日『静かの海のパライソ』を見たこと、それに『沈黙』を想起したこと、自分自身の信仰と殉死について考えたこと……それらがあって、偶然電子書籍がセールしていたこともあり、思いきって買いました。運命論のつもりはないけど、わたしは「ちょうどその時」というのがあると思っていて、電子書籍のセールを見た時に「今が『ちょうどその時』だろうか」と思ったのです。

 非常にさっくりと『深い河』のストーリーを紹介しますと「あるインド旅行ツアーに行った日本人たちは、それぞれに抱える胸の痛みや空虚感、目的などがあり、旅行をする間にその想いを昇華する。」です。
 主な登場人物は以下のとおり。

・磯辺
 妻が死ぬ間際に「必ず生まれ変わるから見つけてほしい」と言い遺し、半信半疑ながらもその生まれ変わりを探そうとする。

・成瀬
 磯辺の妻をボランティアで看護していた。成瀬は大学時代に一時的なボーイフレンドだったキリスト者・大津がインドにいると知り、自分でもなぜ彼を追うのかわからないままインドへ向かう。

・沼田
 童話作家。彼は若い頃の結核が再発し、複数回の手術により一命を取り留めたのだが、手術の日に話し相手にしていた九官鳥が死んでしまう。まるで九官鳥が自分の身代わりになったように感じ、沼田はエゴだと思いながらその恩返しをしようとインドで売られている九官鳥を買い、自由にすることを目的とする。

・木口
 戦時中はビルマに出兵していた。戦争で亡くなった戦友、敵兵たちと、友人塚田(生還したものの戦時のトラウマから酒浸りになり肝臓を悪くして亡くなった)のために、インドの寺で法要をあげることを目的にしている。

・大津
 キリスト者。大津は、主に成瀬の回想や手紙によってその人物像が描かれる。大学時代、無宗教者の成瀬に「信仰を捨てたらボーイフレンドの一人にする」と言われ付き合い、大津の方は真剣に成瀬を好いていた。しかし成瀬にとってはもとより生真面目な大津をからかうつもりの付き合いであり「最初からボーイフレンドの『一人』だと言った」と大津はフラれてしまう。だが大津はそのことによってよりキリスト教への信仰を深めることとなった。大津は神父を目指すが、ヨーロッパの教会からは大津の東洋的な信仰を認められることはなかった。大津はさまざまな修道院を転々とし、最後はインドへたどり着く。

 ……と、おおよそ五名ほどに焦点があてられた物語です。 みんな違う想いを抱えながら、インドツアーで気持ちを昇華していく(大津はツアー客ではないですが)。

 まず第一に、『沈黙』と違ってすごく読みやすかったです。『沈黙』はどうしても、「改宗か殉死か」という二択を迫られる物語で、読むのがつらかったので……。この『深い河』は単純に小説として、エンタメ的に読めたのです。今まで遠藤周作を避けていたのですが、他の作品も読みたくなりました。

 一番注目して読んだのは、明確に信仰を持つ大津でした。彼は彼なりの信仰を貫き続けており、最後は(おそらく)命を落としますが、個人的にはあんまり悲しいと思わなかったです。「ぼくの人生は……これでいい」と大津が言うように、それでいいと。それがキリスト教的にいいのか悪いのかはわたしはよくわからないのですが「大津自身の信念、信仰を貫いた結果」なので。

 大学時代の大津と成瀬との関係について「大津、男でよかったね」と思ってしまいました。これ男女逆だったら、「断りきれずに」性的関係になって妊娠させられて捨てられるみたいになるだろうなーと。男でよかったね。成瀬にふられるところは、本来なら同情するシーンなんでしょうけど最初から「ボーイフレンドの『一人』」って断言されてるので、そこ「一人ってなんですか、ぼくと真剣に交際してくださいよ」って交渉できない大津も大津だと思いました。勝手に結婚まで想定してたとか相手との距離感が測れてない……一歩間違ったらストーカー化しそうだなと思ってしまった……大津、神父の道に進んでよかったね……。あと男だからインドでも自由にできてよかったね(三回目)。

 古い作品なのであれですが、磯辺とか現代だと「モラ夫」的だなあと思いました。一切家事が出来なくて死ぬ間際にまで妻に生活の心配されるとか子供じゃないんだから。遺影に怒鳴るのも、そこは「死後にまで心配かけるような夫ですまない」と謝れよと思ってしまった。死んだ妻にケア労働を期待するな。あと浮気するな。
 成瀬も「いい大人が合意の上で誰と寝ようと自由なんだからそんな悪女ぶらなくても」と思いました。時代が時代なので恋人、夫以外の相手との性的関係に風当たり強いのかもしれないですけど。成瀬、もしかしたらロマンチックラブイデオロギーに馴染めないことに苦しんでるのかなあ……と思い、恋愛や結婚なんかしなくていいからハッピーに生きてくれ……と思いました。信仰があり神の愛を信じる大津と無神論者(なので愛も信じられない)の成瀬、って対比なのかもですが。大津のことはそんなに気にしなくていいよ、あなたの責任じゃないし大津は自分の生きたい人生をまっとうしただけだから……成瀬も自分の生きたいように生きてくれ……男なんかに振り回されなくていいよ……って思いましたね……。ほぼ唯一の女性なので感情移入してしまうだけかもしれないけど。

『人生の踏み絵』他

タイトル:人生の踏み絵
ジャンル:講演録

 遠藤周作の講演録。『沈黙』について、「弱い人間を書きたかった、自分も踏み絵を踏んでしまう弱い人間だから」みたいな話に、少し弱い自分を許されたような気持ちになりました。こんなに深く信仰について向き合い小説を書き続けた人が、そんな人でさえ「自分は転ぶだろう」と思っているのか……と。でも、そうでなければあの物語は書けないのだろうか、と思いました。

タイトル:遠藤周作『沈黙』をめぐる短篇集
編者:加藤宗哉
ジャンル:小説

 キリスト教についての短編小説を集めた本。
 隠れキリシタンの小説や、戦後に信仰の自由が認められたあと、「本来のかたち」のはずのカトリックを認められない元・隠れキリシタンの人々など、興味深い内容の短編集でした。ただ、愛があり慈悲深いもの……的な意味で「母の宗教」と呼んでいるのは、個人的には違和感がありました。隠れキリシタンにマリア信仰が強かったことから「母」と言っているのかもしれませんが。ただすごーく個人的な感情として「母=愛、慈悲、許し、受容」みたいなイメージとして語られるのが嫌なんです。だって「母」ってただ「子供を産んだ親」というだけで、神聖なものでもなんでもない。そうやって「神聖なものとして非人間化する」というのは「蔑視」とウラオモテだと思うんで。

タイトル:沈黙の声
ジャンル:エッセイ(?)

 代表作『沈黙』の制作秘話などを語ったエッセイ。「最初は『ひなたの匂い』というタイトルにしたかった」というのが、意外すぎてびっくりしました。あの凄惨な内容の小説のタイトルが『ひなたの匂い』……そんなほのぼのエッセイみたいな……絶対タイトル詐欺って言われるやつじゃん……と思いました(笑)。
 著者の意図としては『沈黙』は「神が沈黙しているというわけではないのに、タイトルからそう読まれてしまった」という話と、多くのキリスト者ではない日本人には、込めた意図が伝わらない、というのが印象的でした。

笙野頼子

『ひょうすべの国』

タイトル:植民人喰い条約ひょうすべの国
ジャンル:小説

 『ひょうすべの国』がすごく面白い、と聞いて笙野頼子の小説を初めて読みました。最初は、ちょっと文体が読みにくいと感じたのですが、ディストピアな設定が面白くて夢中になって最後まで一気に読んでしまいました。
 TPP、作中では「植民人喰い条約」を批准してしまった日本が、「日本」という国名も「にっほん」となり、雇用は崩壊、国民皆保険もなくなり、ちょっとした病気でも大金を要求され、人々は困窮におちいる。「ひょうげんのすべて」、通称「ひょうすべ」がにっほんを支配し、子供を虐待することも児童買春も「アート」とされ、それに反対することは「表現の自由の侵害」とされる。女児は子供の頃から遊郭に売られてしまい、男児は奴隷労働に……。そんな世界が、埴輪あゆむ(雅名詩歌)の半生と共に描かれていきます。
 近未来SFなのですが、すごく唐突に火星人が出てきて、それについての説明がほとんどない。え、火星人? どういうこと? どこかで説明が入るのかな? と思ったら結局特に説明はされない。ウラミズモという言葉も結構唐突に出てきて、なにやらにっほんの中にできた女性のみの独立国らしい。でも、にっほんよりよい国とも言えず後ろ暗いこともやっている様子……わからないことも多いのに、とにかく先が気になり、面白くて徹夜で読んでしまいました。
 なんていうか、説明するのが難しい面白さでした。設定にわからない部分もある、でも先が気になる、面白くて読むのがやめられない……そんな小説でした。これは、あまりネタバレを読まずにとにかくこの本そのものを読んでほしい……と個人的には思いました。

「だいにっほん」三部作

タイトル:『だいにっほん、おんたこめいわく史』
『だいにっほん、ろんちくおげれつ記』
『だいにっほん、ろりりべしんでけ録』
ジャンル:小説

 『ひょうすべの国』の詩歌の娘・いぶきが主役の三部作です。こちらの方が先に書かれた作品ですが『ひょうすべの国』より未来の時間軸ってことですね。一作ずつ全然雰囲気が違うように感じました。
 こちらも設定が複雑! でも面白い! 「おんたこめいわく史」は「みたこ教」を信じるいぶきらが「おんたこ」により弾圧されてしまうところから始まり、「ろんちくおげれつ記」ではいぶきは「よみがえった死者」になっており(!)、「ろりりべしんでけ録」では笙野頼子の過去作の登場人物が登場し……なんとシリーズ通して笙野頼子本人も登場。こんな小説読んだことない! 設定が複雑で、読み終えてもわからないことだらけなのですが、そのわからなさも面白いというか。過去作を読んだ方が意味がわかる部分あるのかなあと思い、そちらも読んでいきたいと思いました。

『ウラミズモ奴隷選挙』

タイトル:ウラミズモ奴隷選挙
ジャンル:小説

 こちらは『ひょうすべの国』の続編です。女性たちの独立国ウラミズモの物語。
 陰石の化身・姫宮が夫(陽石、現在行方不明)が博物館に預けた矢尻を取り戻しに博物館を目指すところから始まる。ウラミズモに生きる複数の女性たちの人生に焦点を当てながら、姫宮が矢尻を取り戻すまでが描かれる。
 だいにっほん三部作やひょうすべの国ではほとんど描かれなかったウラミズモの内情が描かれる。うーん……残酷な国であるし、でもにっほんよりはマシなのか……教育のしっかりした国のようなのに、なんだか歪なウラミズモの少女たち。にっほんから独立して「いい国」になれそうなのに、そうはならないあくまで「ディストピア」な国。文章の読みやすさでは一番読みやすいかもしれませんが、内容がとてもハード……。
 印象的だったのが、少女たちが姫宮含む年配の女性たちを「ばばー」と罵るところ。時間が経てばいずれあなたもそうなるのに? にっほんは男性が自分より弱い立場の女性を蔑視する、しかしウラミズモのように女性だけになっても、人間というのは「自分よりも弱い、劣った(と自分が思っている)立場の者を差別する」ものだ、ということなのかなあ……。
 続編があるようなので、出るのが楽しみです。

『猫沼』

タイトル:猫沼
ジャンル:エッセイ

 著者の飼い猫たち(過去に飼っていた猫と、現在飼っている猫)のエッセイ。現在は、保護施設から引き取った老猫ピジョンとふたり暮らし。主にピジョンを引き取るまでの話と、これまで飼っていた猫たちの話。
 猫への愛情が深く、ところどころ泣きながら読みました。特に、ピジョンが「お父さん」(以前の飼い主、亡くなられた男性)を求めている描写で、ぼろぼろと泣いてしまいました。抱っこが大好きなのは「お父さん」に毎日抱っこされてたからなのかな……。うちの猫は、普段はつれないのですが時々すごく甘えん坊になって、自分から人の肩に飛び付いてゴロゴロ喉をならして……ということをします。でもそんなことはうちの家族しか知らないことで、もしうちの猫が誰かに引き取られることになったら、飛び付かれた時にその人はあの子をそのまま抱っこして甘えさせてくれるのかな……なんて考えてしまいました。うちは家族が全員いっぺんに何かある、なんてことはまずないんでしょうけども……。
 著者の方自身も難病があり、猫のピジョンも腎臓病で、腫瘍の手術をして……という状況のようですが、少しでも元気に、長く、幸せに暮らせますように……と思いました。