感想等雑記

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【ネタバレ】禺伝 矛盾源氏物語 2023/02/04 18:00公演 ライブ配信感想

 スイッチングの配信見ました。面白かったです。
 歴史の方が源氏物語に書き換えられそうになって、刀剣男士たちが源氏物語の中に入ってしまうという異色のストーリー。源氏物語を読んだことなくても、問題なく楽しめました。ちょっと女性たちの名前がわからなくなることはありましたが、ストーリーを追う分には大丈夫でした。時折誰がしゃべってるのかわからなくなることあったけど、これは声を覚えたら解決するかな?

 以下、ネタバレ感想です。

●ストーリー

・行間なら自由に動ける
 「源氏物語のストーリー中は自由に動けないけど、行間なら自由に動ける」っていう設定が面白い! 文字の書かれた布で物語中であることを表現したり、ぐるぐる巻き付けて「物語に縛られている」ような表現したりして、それも面白かったです。

光源氏になる歌仙と大倶利伽羅
 歌仙は違和感なく光源氏を演じ、大倶利伽羅はワイルドな(?)光源氏になっているのが面白かった。「演劇で同じ役でも役者が変わると印象が変わる」みたいなのと重ねてるのかなあ、と思ったり。

光源氏の遺体
 遡行軍の目標は「光源氏の墓や遺骨」を作って「源氏物語は実際にあった」という偽りの歴史を作ること。源氏物語光源氏を一緒に埋葬するみたいな終わりでしたが……それただの「源氏物語と共に埋葬された遺体」にしかならないのでは? それっぽい場所に埋めたらなんとかなるのかなあ? 遺体以外にもいろいろ工作するのかなあ……。

・実験本丸
 正確な用語忘れましたが、今回の刀剣男士たちは刀剣男士に新しい物語を付与する実験的な本丸の刀剣男士らしい。最終的には「偽りの物語ではダメだった」という結末になりましたが……。一文字には「偽りの物語が付与されたという自覚」があり、歌仙と大倶利伽羅にはない。「一文字の力が強いから」みたいなこと言ってた? 歌仙が「前の主は細川ガラシャ」が偽りの物語となかなか気づかなかったのは何故だろう。「細川忠興から歌仙兼定を譲られていてもおかしくない」みたいな認識なのかな?
 でも偽物の逸話と本当の逸話の境目ってどこなんだろう。「沖田総司菊一文字」とか創作ベースだけど「創作として刀剣男士に組み込まれている」わけで。だいたい巴型薙刀や静型薙刀みたいな「物語なき刀剣男士」も顕現できるのに偽物の物語を付与する意味はあるのかなあ……。あ、幽霊切りの逸話なんかは幽霊特効つくみたいな効果あるのか。山鳥毛にそんな台詞あったし。それなら「何々家に渡った」にはなんの効果があるんだろう……。幽霊切りみたく「何々を切った」の方が素人目には強そうに感じるけど、それを付与されたのは山鳥毛だけみたいだし……。

・「女性」が演じるから意味がある
 個人的に「女性が刀剣男士を演じる」、それだけでも感激してしまい、最初の登場したシーンだけで既にちょっと泣きそうになってしまいました。刀剣乱舞、ゲームもメディアミックスも「女性がいないからこそ安心して娯楽として楽しめる」という一面もあるのですが(女性のキャラクターだと妙に性的誇張されていて楽しめなかったり、女性の出るストーリーだと時代的に女性差別が強く見ていて辛いなど……)、でも女性の演者でも見たいという気持ちはずっと前からあって、いつか宝塚でやらないかなあなんて思っていました。女性を見たくないと思うと同時に女性の活躍が見たい、っていうのも変な話ですが。だから今回の公演はとても楽しみにしていました。
 物語としても「女性が演じる」ことに意味があったのかなって思いました。刀剣男士たちが平安の男性たちの感覚に怒ってるとことか、紫式部の「女に生まれたから」って台詞とか、女性が演じるからこそ真に迫るというか。
 あと、光源氏が女性に迫るシーンのエグさとか女性だと薄まるからよかったなって……。特に若紫……。

●キャラクター

・歌仙
 外見からワイルドさのにじみ出ない文系歌仙兼定だ! って思いました(ステ歌仙はワイルドさがにじみ出ている)。ゲームよりも優雅な感じ。本を持つ姿が似合う~。

・大倶利伽羅
 光源氏やってる時イキイキしてるのが面白かった……(笑)。普段の大倶利伽羅なら絶対見れない顔が見れました。禺伝大倶利伽羅は結構協力的な個体ですね。単独行動もちゃんと歌仙に伝えてからするみたいだし。女性に成り代わろうとするとこ「いや男の大倶利伽羅じゃ無理では?」って思ったら「十二単は似合わない」って言われてた。十二単よりは活動的な服装のが似合うだろうなあ。

・南泉
 南泉がすごく可愛かった! ミュにはなかった末っ子感がある~。禺伝南泉は気遣いのできる感じ。序盤の取りなしをするところ見てそう思いました。ミュでも禺伝でも「聞き役」というのか「それってなに?」と聞いて観客への説明を促す役回りですね。

・姫鶴
 ゲームの姫鶴は個人的に「お兄さん」という感じなのですが禺伝の姫鶴は「お兄様」って感じだ……! と思いました。ゲームだとゆったりした喋り方で外見より気さくな「お兄さん」だな~って感じなのが、禺伝だと喋り方でも気品の高さがぶれないから「お兄様」みたいな……ビミョーなニュアンスですが(笑)。長い髪が殺陣で揺れるのがすごくかっこよかった。

山鳥
 立ってるだけでかっこいい。サングラスをくいってするところかっこいい。かっこいいのかたまり。ずっと見ていたい。
 幽霊切りの逸話を付与されてたけど山鳥毛と幽霊って全然似合わない感じです。あえて似合わない逸話をくっつける実験なのかなあ。

則宗
 殺陣が意外とワイルド! なんかもっと優雅なイメージだったから……でも則宗の物語に沖田がいるからワイルドなのかな? なんか禺伝だと「おじいちゃん」より「お父さん」て感じだなーと思いました。則宗がお父さんで山鳥毛、姫鶴、南泉の三兄弟みたいな(笑)。
 もっと縦ロールにボリュームがほしいな……と思ったけどゲームイラストもそこまでボリュームないですね。

光源氏
 光源氏って現在の感覚からするとただの浮気者のクズ男だなあ。最後に出てきた女性の人数多すぎて驚いた。浮気しすぎだろ。
 でもそんなクズ男を魅力的に演じられるのが本当にすごい。すごいかっこいいので「あなたが美しいから」っていう台詞にめちゃくちゃ説得力がある。最後の衣装も本当にかっこいいな~! 光源氏、クズだな~と思わせるのに「憎めない」という女性たちの気持ちもちょっとわかる謎の魅力がある……。あんな人数浮気してるクズなのに……。

源氏物語の女性たち
 名前が覚えられない……。メインで最初から出てたのが小少将の君? パワフルで素敵な女性だなあと思った。ガンガン行動していくとこ素敵。刀剣男士たちに出会ったときには既に「行間をたくさん行動したあと」ですよね。動きにくい服で、たぶん動きにくい役割をあてられて、でも物語を壊すために走る。かっこいい……。
 紫式部が「女ではなく男に生まれていたら」と言われてしまうこと、思ってしまうこと、悲しいとかより「女に生まれるってこういうことだよな……」と感じました……。現代でも医学部不正入試が発覚しましたが、発覚していないものもごまんとあって「女に生まれたから」正当な評価をされなかったりそもそも門を閉ざされたりしてしまうことがある。でもそれが「きちんと描かれたこと」がよかったと感じました。ごまかしなく「そこに女性差別があること」が描かれた。これを女性だけで演じるからこそ意味がある気がする……。
 若紫可愛い~。可愛いけど、可愛いからこそ、光源氏に「近づくなグルーマーめ」という気持ちになってしまう。
 鼻の長い女性、「なぜ作者はわたしをこんな風に描いたのか」、ありとあらゆる物語もその登場人物は嘆いているのかもしれない……と考えてしまいました。なぜわざわざつらい役回りを? と……。見る側の人間にとってはただの娯楽……物語側の人間(登場人物)にとってはつらい人生……。サージュコンチェルト思い出しました……アルノサージュでプレイヤーに対して「私はここで苦しんでいるけどあなたはゲームを遊んでるだけじゃないか」と言われるけど、この「なぜ作者はわたしをこんな風に描いたのか」ってひいては観客に対して「あなたは人の苦しみを娯楽にしている」という意味にもなるよなあと……うーん『虚無への供物』(中井英夫)。

●その他

 面白い舞台でした。源氏物語、読んでみたくなりました。読んだあとには禺伝から受ける印象も変わるのかもしれません。ディレイ配信中には読みきれなさそうなので先の話になりますが。
 こういう女性だけの刀剣乱舞、またやってほしいなあ。みんな歌やダンスもうまそうだしミュージカルも見たい。「女性歌劇刀剣乱舞」とか新シリーズつくってほしい。

●追記:ディレイ見た感想

・山姥切国広は何が特別なんだろう
 「ステ本編本丸の山姥切国広」がそこまで期待を集めてるのはなんでなんだろう?  たくさん本丸があってそれぞれの本丸でさまざまなことが起きてるはずなのに、彼だけ特別「物語経験値が高い」みたいなこと起きるの? と。他の本丸にはステ本編みたいなことはめったに起きない、のかな? なんか勝手にどこの本丸も全部大変なのかなって思ってたけど「あの本丸」だけ大変ってことかな……。

光源氏以外は全員架空の存在なら…
 最初は平安時代の現実の人間(小少将の君、紫式部他)が物語に取り込まれている……と見せかけて実際は光源氏を演じる「ある男」以外は全員物語の存在だった……なら、なんで紫式部、小少将の君は「物語を破綻させようとする」のだろう? そもそもなぜ「源氏物語の登場人物」と「歴史上人物(ただし架空)」が重なりあうようなことが起きているのか? 「源氏物語そのもの」に「物語を正常化させようとする力」みたいなのがあって「異物(光源氏を演じる男)の排除をしようとしている」とか……? その際に要請されたのが「自由に動ける登場人物」で「源氏物語」が要請できた人物が紫式部、小少将の君他源氏物語に関わりのあった歴史上人物……で、「新しい人物を書き加える」ことはできないから、「物語の登場人物の人格だけが行間に変わる」みたいな……。あ、最後に「物語の反乱」と言ってたから先に言った「物語を正常化させようとする力」よりむしろ「物語に反抗する力」みたいなのを持ってた、とか?

・ゲームと違う台詞
 歌仙と大倶利伽羅は最初に言う刀帳の台詞がゲームと違うものになっていて、それが今回の「実験本丸で付与された物語だから」という伏線になっていた。一文字も戦闘中に違うキャラクターの台詞を言う。これまでの刀ステで「ゲームの台詞をそのまま言わなくてもいいのになあ」と思ったこともあった(台詞が長いとか場面から唐突に感じるとか)のですが、これまでに「ゲームと全く同じ台詞を言う」という積み重ねがあったからこそ今回の「台詞が違う」が効果的に作用してると思いました。ずっとゲームの台詞を忠実に言わせてたのは「それがその刀剣男士の物語だから」っていう意図があったのかなあと。

・空蝉のツッコミ入れるシーンが好き
 このシーンすごく面白かった。「じゃあ引き下がれよ!」ほんまそれほんまそれ。男士たちがガチに光源氏の浮気性を軽蔑してたり歌仙が空蝉を心配してたり、感覚が未来人だ。実際未来から来てるけど。

・「物語は嘘なので地獄行き」
 仏教自体が四門出遊とか梵天勧請とかめっちゃめちゃ「物語」入ってるけどいいの~!? って思った。整合性どうなってんだ? 「事実に付け足すならよい」みたいな理屈なのかなあ……? 途中「光源氏が存在してようが物語は物語では?」と思ったんだけど「事実への付け足しはセーフ」なのか……?

・OP曲
 なんか、OP曲にふと「みとせのりこっぽい」と思ったのですが具体的に似てる曲は思いつかないです。なんだろ、コーラスの感じとかに似てると思ったのかな?
 ダンスすごく綺麗で好きです。