感想等雑記

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【ネタバレ】花帰葬 感想

タイトル:花帰葬
メーカー:Haccaworks*
ジャンル:ビジュアルアドベンチャー
機種:Windowsプレイステーション2PSP(DL版をVitaでプレイ可能)

 主題歌、BGMともに志方あきこが担当しているので興味をもったゲーム。VitaでPSPのDL版を遊びました。
 もともと何年も前に購入していたんですが、3回くらい悲惨なエンディングを迎えてしまい「もういいや……」とやめてしまってました。今度発売される志方あきこベストアルバムに花帰葬のイメージソングが書き下ろされるということで、作品をきちんと知った方が新曲を楽しめるかな? と思いプレイを再開しました。

 ストーリーは、主人公・玄冬が記憶喪失になったところから始まる。一緒にいた少年・花白は自分は旅の連れだと言うが、なにやら隠し事をしている様子。彼が悪人というわけではなさそうだが、なにやら彼は追われているようで……。

 と、なんで追われてる? そもそも花白は信用できる? など考えながら選択肢を選んでいきます。だんだん世界の状況や玄冬や花白の関係が判明していく。
 今回は、とりあえず一番ハッピーエンドっぽいのに辿り着くまで自力で頑張りました。そこに行くまでやっぱりまた5回くらい悲惨なエンディングへ行きましたが……選択肢難しい! で、それ見たあとは攻略見ながら残りのエンディングを回収しました。全エンディング回収、番外編? も全部読んだ感想です。

 以下、ネタバレ注意。

●キャラ雑感

・玄冬
 先代玄冬の描写や子供に好かれやすいところ、普通の人間だったら「人望厚い青年」なんだろうなあ……。リーダーシップもありそう。本当に主人公タイプというか。残念ながらこの物語でそのあたりが発揮されない。世界のシステム的に「玄冬本人ができること」があまりにもない……誕生した時点で世界の方がどん詰まりになっている……。システム変更しなければ永遠に殺される存在として生まれなきゃいけないの残酷すぎでは……。
 そもそもシステム的に「玄冬」を「人間」にしてるのあまりに残酷じゃない……? 植物とか動物とかじゃなくて……いや動物もかわいそうだけど、人間が生きるために狩猟や害獣の駆除はしないといけないこともあるし、「殺人」とはだいぶハードル違うわけで……。「人間が人間を殺してしまった人数が多くなりすぎると世界が滅びに向かう」なのに「滅びを止める方法も殺人」なのおかしくない? 研究者はどういうつもりでこの世界ルール作ったの? て思う。「人間を殺してしまうと世界が滅びに向かう。滅びを止める方法は「ある人間」を殺すこと。この矛盾を起こさないために人殺しをしないようにしよう」っていうのが理想のカタチだったんだろうか……。だったらそもそも「人間から殺意をなくす」とか「人間の理性をもっと高くする(感情に流されないようにする)」みたいな「人間に手を加える」方がよかったのではないか……。人間の愚かさそのままに「滅亡/救済システムの追加」だけしても意味なくない……? でもそれもこの世界が「失敗した実験」てことなんだろうなあ……次はどんな世界作ったんだろ……。
 「システムとしての玄冬」のモデルはオオゲツヒメとかハイヌウェレとかの「殺されることで食べ物をもたらす女神」かなあとプレイしていて思った。

・花白
 最初のうちは花白の印象がかなり悪かった(隠し事してるし、倫理観もちょっと……)。全エンディング見る頃には「別に悪い子じゃないんだよなあ……環境や負わされたものがよくなかっただけで……」と印象が変わりましたが。ただ、子供に対してまで容赦ないのは、本当にどうかと思う。鈴音のこと深く反省してなさそうなとこも……。もちろん兵士なら殺していいわけでもないけどさ、子供……。花白は視野が狭いというか、立ち回りが不器用というか……もう少し力業じゃない方法ないの? て思ってしまう。まあ花白自身もまだ16歳の子供だし初めて出来た友達の玄冬を失いたくなくて暴走してしまってるのがベースだからなあ……他の友達がいたらもっと違ったんだろうけど、比較的歳の近い銀朱が素直に友達になれる性格ではないし。銀朱、花白を気にかけてるのに個人の感情より「使命」を優先する性格な上に不器用だから花白と友達にはなれない……。

・銀朱
 銀朱も悪いやつではないけど不器用でいろいろ損な役回りという感じ。でも頑固な性格だからこそ「勝者の烙印」での「民を見捨てない」という言葉、絶対そうするんだろうっていうのが未来の描写がなくてもわかるし銀朱ならやれるだろうって信頼感ある。被害者の多い悲惨なエンディングだけど銀朱が一番かっこいいと思った。
 ゲームプレイ前からサントラの曲『銀朱』がすごくかっこいいので好きでした。でもゲーム序盤は銀朱にあまりいいシーンがないから「曲はかっこいいのに、キャラはそんなに……」と(笑)。いろんなエンディング見てから本当に印象が変わって「この曲が似合う」って思いました。

・黒鷹
 システム変更の決意もっと早く出来なかったの? てのは思う。22年子供(玄冬)を育てて、その子の未来を繋げていきたいとは思わなかったんだ? 黒鷹が早く決断してたら玄冬苦しまなかったじゃん……玄冬のこと愛してるならやるべきは玄冬/救世主システムを早期に停止させることだっただろ……と思ってあまり同情できない。「花に捧ぐ」に向かうルートも人類皆殺し宣言してる花白放置してそんなのんびりする!? てびっくりした……。黒鷹的には「救世主が人を殺す分には世界は終わらないのでゆっくり話しても大丈夫」で「一人の犠牲者も出すべきでないから急ぐべき」っていう人間的な感覚がないんじゃないだろうか……。
 サントラの『或るK氏の~』のシリーズがにぎやかで面白い曲だなと思っていたので、キャラクターを見てなるほどとなりました。

・白梟
 初回プレイで見たのが「羊水のひかり」だったのですごい怖かった。白梟も人の心があまりにもわからない。そりゃ花白も反発する。白梟の内心がどうだろうと「行動」が虐待なので花白は白梟を慮ってやる必要ないと思うよ……殺人を強要してくる親からは逃げるしかないと思うよ……。全体的にまともな倫理観(人間の価値観において)のキャラクターは出てこないけど白梟がトップレベルにやばい。

・研究者
 玄冬側から見れば残酷だけど、この世界は「現実世界」でたとえると「『世界』のシミュレーションゲーム」で研究者はその開発者、って感じなのかもしれない。シミュレーションゲームの中で何人死のうが観察する側としてはさして感情動かないし「このプログラムは失敗だったな」と思ったらすぐ放棄できる、研究者にとってはただのシミュレーションゲームだから……って。

●全体的な感想

 システム面は既読スキップあって周回プレイしやすい。ロードも特に気にならなかったです(Vitaでのプレイ)。
 最近めっきりアドベンチャーゲーム(っていうのかな)はやらなくなったので久しぶりにこういうの遊びました。若い頃は「さっきこっちの選択肢だったから今度はこっちを……」って前回の選択を覚えてたんですが、今は「どっち選んだっけ?」「この組み合わせもうやったっけ?」ってなってしまい苦労しました。もう記憶力がアカン……。

 ストーリーはあんまり救いはない……「滅びゆく世界であがく若者たちの物語を悲劇含めて楽しめる」人ならハマるかも……。

 塔が出てきたときにアルトネリコを思い出して、塔というのは「人工の世界」の象徴なのかなあ……と思いました。アルトネリコは人工の世界というわけではないけどあれは「発達しすぎた文明」……と考えてバベルの塔を思い出しました。バベルの塔は塔の方が壊されたけどアルトネリコはアルシエルの方が壊れてしまった……。塔はオーバーテクノロジーの象徴、なのかもしれない。

 一番ハッピーエンドのエンディング、理不尽なシステムの滅びゆく世界が「システムがあるよりはマシになった」けど、その後は本当に滅びていくかもしれなくて、いいのかなあ……と最初は思いました。でもよく考えたら地球だって何億年後かには太陽の膨張かなんかで滅びるんでしたね。そんなに悲観しなくていいのかな。

 ゲームクリアして改めて主題歌の『花帰葬』聴いたら歌詞に「なるほど……」って思いました。ゲームを知らない時は「駆け落ちする歌かな」くらいのフワッとした印象だったんですが、ゲームプレイ後は「『花帰葬』の物語をまるごと表現した歌詞だ!」って思いました。
 サウンドトラックの方も、曲タイトルが「これキャラクター名だったんだ」とかゲームやりながら「ここで『春告げ』……! だから『春告げ』なのか!」みたいな感激がありました。今サントラを聴くとゲームの情景が浮かんできます。そういやメインキャラクターの『玄冬』『銀朱』『白梟』『黒鷹』はサントラタイトルにあるのに花白はないですね。序盤にしか出ない『希沙』はあるのに。

 世界観はゲームプレイすると本当によくわかります。楽曲の解像度が上がる~。ベストアルバムのイメージソングがますます楽しみになりました。